走ることについて語るときに僕の語ること
本当は文庫になるまで待つつもりだったのですが、大好きな村上春樹さんが書いた走ることについての本ということで、がまんできずに買ってしまいました。私は春樹さんのようにフル・マラソンを毎年走るような本格的なランナーではないのですが、それでも、走ることを日課としている者として、30代になってから走ることの喜びを見出した者として、そして、ささやかながら芸術にたずさわる仕事をしている者として、共感するところがとても多い本でした。特に、彼の小説に対する姿勢は、私の音楽に対するそれとすごく近くて、読みながら、うんうんと頷いてしまいました。もちろん春樹さんと私とでは、雲泥の差があることは言うまでもないのですが (それにしても 「雲泥の差」 ってすごい言葉ですね。いくらなんでも私は泥よりましだとは思いますが、、、)。
歳をとってタイムが思うように伸びなくなったことや、肉体の衰えに直面した時の心境なども正直に書かれていて、そのあたりには潔さを感じたし、これからそういうことを経験していくはずの者として、勇気もいただきました。
中には、これまでにエッセイなどで書かれたことのある内容もありましたが、こうして一冊の本にまとまったものとして出版されるのは、ファンとしてはうれしいものです。
特に印象に残った部分は、ある程度歳をとってくると、人生には優先順序 (時間とエネルギーをどのように振り分けていくかという順番) が必要になってくる、というようなことが書かれた部分でした。「ある年齢までに、そのようなシステムを自分の中にきっちりこしらえておかないと、人生は焦点を欠いた、めりはりのないものになってしまう」 という一文を読んだ時は、はっとさせられました。これは私が、ある時期からぼんやりと感じていた危機感だったのですが、それを明確に文章で表されたのを読んで、「ああそうか、私の感じていたのはこういうことだったのか」 と目から鱗が落ちた気分でした。考えてみると、20代の半ばに家にテレビを置かなくなったあたりから、私の中でそういうシステム作りは始まっていたのかもしれません。そして現在は、そのシステムを固める時期に来ているのかなあ、と思います。
本編の最後に書かれた結論 (のようなもの) と、閉めの言葉には思わずじーんとしてしまいました。今日も走りながら思い出して、何ともいえない熱い思いがこみ上げてきました。明日もがんばって走って、ピアノを弾いて、ハーモニカを吹こう。

LiLA管理人 のコメント
5月 6, 2008 に 5:13 am
僕もちょっと前に,この本を読みました.珍しく本人の写真が沢山出てますよね.読みながら,自分もマラソンを一緒に走ってる気分になってしまいました.たまにジョギングする事はあるんですが,あの歳であそこまでアスリートとしての体を作り上げていった作者には脱帽です.
人生に優先順序が必要って,痛い程分かるんですが,とりあえずは目先の仕事に追われてしまいます.作家や作曲家のように,自ずから頼む所大なる芸術家的生活に憧れてしまいます.やれやれ.
Yuki のコメント
5月 6, 2008 に 1:44 pm
>LiLA管理人さん
多くの人は仕事が最優先になってしまうのが現状ですよね。私もその一人ですが、限られた時間の中で、物事に優先順序をつけてやって行けたらなあ、と思っています。
自ずから頼む所大なる芸術家って、集中して創作できるという面ではうらやましいですけど、それはそれで大変そうですよね。精神的にかなり強くないと、やって行けそうにないです。